都道府県別DV保護命令既済件数

裁判所の司法統計から、DV保護命令既済件数ランキング。配偶者暴力に関する保護命令のうち、判決もしくは和解などで既済となった件数を比較している。既済には認容(保護命令発令)、却下、取り下げの3つのケースがあり、このランキングであげている全ての件数で保護命令が発令されたわけではない。また、年による変動を避けるため、2009年〜2011年の平均値を使っている。

なお、都道府県別の保護命令発令件数の古いデータがネット上にいくつかあるが、出典となっている裁判所のホームページからは削除されており、新しいデータは公開されていない。


DV保護命令既済件数は2,980.0件で、人口10万人あたり2.33件の保護命令が既済となっている。最も件数が多いのは鳥取県で人口10万人あたり7.18件。2位は岩手県で5.40件。以下、沖縄県、栃木県、岡山県と続いている。一方、件数が最も少ないのは愛知県で人口10万人あたり1.00件。神奈川県、長野県、富山県、岐阜県の順に低い。

ただし、この数値を単純にDV(家庭内暴力)の件数と結びつけるのは注意が必要だ。

ウェブ魚拓:朝日新聞:DV保護命令に地域差　最多沖縄、最少長野の6.8倍

各地域で実際にDVが発生した件数はわかっていない。ただ、こうした数字は、DV被害者への支援活動が手厚いかどうかなど、地域によって被害者の救済に格差が生じていることを示唆している。

また、裁判官が発令か却下かを判断する前に自ら申し立てを取り下げる人の割合(取り下げ率)にも差があった。

最高裁統計によると、保護命令申し立ての総数(審理中を除く)は1万7566件で「取り下げ等」(別の裁判所への移送などを含む)は全国で2683件あった。取り下げ率が高かったのは岐阜(27.1%)、長野(26.4%)、水戸(24.5%)。これらの地域は人口当たりの発令件数も少なくなる傾向があった。

つまり、都道府県によって保護命令への温度差があり、保護命令を積極的に使うような支援体制が整っているところと、そうではないところがある。

分布状況を見ると、本州中央部で件数が少なく、両端で件数が多い。相関ランキングでは人工妊娠中絶件数と正の相関があり、DV保護命令既済件数が多いところは人工妊娠中絶が多い。つまり、DV保護命令既済件数が多いところでは女性が望まない妊娠をすることが多いと言える。