国立がん研究センター:
75歳未満年齢調整死亡率2007年4月、国のがん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、「がん対策基本法」が施行されました。2007年6月にはこの法律に基づいて、「がん対策推進基本計画」が策定され、全体目標の1つとして「がんによる死亡者の減少」が掲げられました。「75歳未満年齢調整死亡率」はその評価指標として用いられています。この指標が用いられたのは、年齢調整率を用いることで高齢化の影響を除去し、75歳以上の死亡を除くことで壮年期死亡の減少を高い精度で評価するという理由に基づいています。
白血病の年齢調整死亡率の全国平均は2.47で、75歳未満10万人あたり2.47人が白血病で亡くなっていることになる。
最も白血病死亡者が多いのは鹿児島県で、人口10万人あたり4.87人。これは全国平均の2倍の多さだ。2位以下は沖縄県、長崎県、宮崎県、大分県と続いている。一方、最も少ないのは群馬県で1.87人。富山県や広島県、岡山県、長野県などで死亡者が少ない。
分布地図を見ると九州で白血病死亡率が高い。これは白血病の一種である成人T細胞白血病がこの地域で多いためと思われる。
成人T細胞白血病成人T細胞白血病(ATL)は、病名に白血病とあるように“血液のガン”である白血病の一種である。血球には赤血球、白血球、血小板があり、白血球には顆粒球やリンパ球などがある。さらに、リンパ球は「T細胞」と「B細胞」などに分けられる。成人のリンパ性の白血病はB細胞によるガンがほとんどだ。ところが、ATLの場合はT細胞によるガンなのである。そのため、成人T細胞白血病と名付けられた。
1976年、京都大学の高月清医師によって、ATLは発見された。患者は鹿児島県の出身者だった。ATLは、ウイルス感染によるガンで、その原因ウイルスが80年に米国のギャロ博士によって発見され、「HTLV-1」と命名された。
ATLのキャリア(感染者)は世界に2000万人、日本には120万人いると推測されている。キャリアが多いとされているのは、九州、沖縄、四国南部、東北のほか、台湾、フィリピン、マレーシア、ハワイ、インド、スウェーデン等々である。
HTLV-1ウイルスについては
HTLV-1とはを参照。
東日本大震災以降、原発事故と白血病の関係がとりざたされているが、原発立地県の北海道、青森県、宮城県、福島県、茨城県、新潟県、静岡県、石川県、福井県、島根県、愛媛県、佐賀県、鹿児島県を見ると多いところもあれば少ないところもあり、因果関係は見あたらない。ウイルス性の成人T細胞白血病の影響の方が大きいため、それ以外の差がほとんど見えないと言った方がいいだろう。白血病の種類別の統計や、市町村レベルでの比較が必要だと思われる。
白血病死亡率:男性白血病死亡率:女性がん死亡率ランキング(死亡率が高い順)
肺がん死亡率胃がん死亡率乳がん死亡率大腸がん死亡率肝がん死亡率膵がん死亡率子宮がん死亡率卵巣がん死亡率食道がん死亡率胆のうがん死亡率白血病死亡率前立腺がん死亡率悪性リンパ腫死亡率膀胱がん死亡率がん死亡率:女性がん死亡率:男性
「HTLV−1感染症とは(略)我が国では九州・沖縄地方を含む南西日本に特に多く見られ、先進国の中で唯一HTLV-1の浸淫国である。HTLV-1は、1980 年にヒトの初めての病原性レトロウイルスとして Gallo R. 博士らにより単離・報告された。(略)HTLV-1の主な感染経路は母子感染(垂直感染)、性感染(水平感染)および輸血の 3 つである。HTLV-1やその関連疾患が日本人らにより発見された 1980 年頃以来、約 10 年の間研究プロジェクトが組織され(略)5)輸血スクリーニングや断乳・人工乳による ◆ HTLV-1感染予防効果の証明 ◆ など、目覚ましい成果を挙げた。しかしその後、HTLV-1および関連疾患は “将来消え行くウイルス”、“九州・沖縄の風土病” などという概念や考え方が急速に広まったため、特に 1990 年代の後半以降、HTLV-1感染と関連疾患に関する組織的な研究や対策などは十分には講じてこられなかった。」(国立感染症研究所)